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99.9%は仮説?

「99・9%は仮説・思いこみで判断しないための考え方」

という本を読みました(図書館で借りて)。

著者は、サイエンスライターの竹内薫さん。
ご本人のHPによれば、40万部を超えたベストセラーのようです。

刊行は2006年。当時、本屋でタイトルを見て、面白そうな本だなとは思っていました。

ただ、その後、ちょっと微妙な本だと言うような話も伝わってきていました。

そんなわけで、実際に読むまで評価は「グレーゾーン(本書より引用)」に置いていたわけですが…。

実際に読んだ感想は…

かなり、「黒い(本書より引用)」本に思えてしまいました…。

著者の方は東大理学部卒業で、Ph.Dもお持ちのれっきとした科学者。
私といえば、理科教育について学んだことがある、という程度の人間ですので、批評なんておこがましいのですが…。

著者の方も「偉い人でも目は曇る」(P44)と言ってくれていることですし…。

(ちょっと長いです…)
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この本は、科学のことについて語っています。
そして、科学を含めた世の事柄すべては、「仮説」に過ぎないとしています。

まあ、「99・9%は仮説」というタイトルの、大ざっぱな部分には同意できます。

科学はすべて近似に過ぎない」(P153)というファインマンさんの言葉でも、それは表されています。

科学では「絶対に正しい」なんてことは言えません。一度打ち建てられた理論が、後々、別の理論に置き換わることは良くあります。

ただ、本書のニュアンスは、ちょっと違うんですよね…。

懐疑を行き過ぎてしまって「科学では、何も分かっていない」という風に書いているんです。
(もしくは、そう思わせようと、誤誘導している)

「仮説に過ぎない(近似に過ぎない)」ということと、「分かっていない」ということは違いますよね。

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そもそも、本のタイトル自体も謎。
「99.9%は仮説」だとしたら残りの0.1%って何だろう?(0.1%は定説があるんですか?)

ファインマンさんの言葉を借りるなら「100%は仮説」とすべきじゃないですかね。
でも、それではタイトルとしてイマイチだったんでしょう。

(あとがきで、このタイトルに含みがありそうなことを匂わせているんですが…答えは書いてません。)

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「データをいくら集めても無駄」「仮説を倒せるのは仮説だけ」(P70~71)なんて書いてます。

でも、別に理論が先に確立していなくたって、科学と言えることだってあります。

客観的な条件で1000回試して(データ)、1000回同じ結果を生めば、それは既に科学(因果関係を実証している)と言えないですか?

理論は後から付いていってもかまわないでしょう。

例えば、脚気の研究の話(Wikipedia「反証主義」より)。

「高木兼寛が二隻の軍艦を使って行った実験は立派な科学である。特に医学においては治療法が確立されたずっと後になってその生理的、生化学的、免疫的メカニズムが解明されることが多い。」

逆に、仮説だけあって実証(データ)を伴わない方が、科学とは言い難いと思いますよ。
(まあ、分野によっては実証しにくいものもありますけど…)

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時々、科学とそうでないものがごっちゃに書かれています。

例えば…
・山一証券のつぶれた話やら、耐震強度の話やら(P34)
・バブルは仮説だから崩壊した(P82)
・ローン会社の査定の話(P84)  (銀行は「統計的」に判断してるんでしょう)
・ロボトミーの話(P109)(科学の「正しい」と倫理の「正しい」が混同されている?)
・惑星/小惑星の名前付けの話(P113) (これって、「つけめんはラーメンです」というのと同じで線引きの話)
・ハイヒールやネクタイの話(P201)  (風習等に科学的も何も…)

例え話で分かりやすく説明しようとして失敗しているのか、わざと煙に巻こうと思っているのか…
ちょっと計りかねますが…。

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科学の「反証可能性」についても書かれています。(P132)

「もしその理論がうまくいかないというような事例が一回でもでてしまえば、つまり反証されれば、その理論はダメになってしまうということです」

いやいや、「反証可能性」の解釈が間違ってませんか?

Wikipedia「反証可能性」によると…

「検証されようとしている仮説が実験や観察によって反証される可能性があることを意味する。
これに対して、いかなる実験や観測によっても反証されない構造を持つ仮説を反証不可能な仮説と呼ぶ。」(上記より引用)

これが正解でしょう。

解釈が違うせいか、「科学は神話に近い」(P154)なんて言葉も引用したり、
「なんらかの知的生命体が生命の種をまいた」(P167)なんて話をアリだとか言ったりしてます。
いやいや、神話の類は「反証不能(=科学ではない)」じゃないですか。

それに、

「われわれの世界が誰かの夢かもしれない」(P206)や、
「世界誕生数秒前仮説」(P241)

なんて話も「反証不能」でしょう。なぜこんな話を持ち出してくるのか、謎です…。

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結局、この本の主旨は何だったのか…私には良く分かりません。

なんか、科学嫌いな人に、「やっぱり科学なんて、信頼するに足らないんだ」という(間違った)自信を与える本になってしまっている気がします。
著者の方は、実は科学が嫌いなのではないかと思ってしまいました。

そんなもやもやした印象で読了したのですが…
あとがきを読んだら、さらに力が抜けてしまいました。

あとがきに「オチ」(というか、言いわけ?)が書かれてるんです。

発端として持ち出した「飛行機の飛ぶしくみはわかっていない」という話について、
「漫才や落語の「つかみ」と同じで、わざと挑発的に書いたものです」(P245)
と書いたり、
「「すべては仮説にはじまり、仮説におわる」というわたしの科学的な主張は、はたして反証可能でしょうか?」なんてトボケたことを書いてるんですよ…
(まあ、答えは「反証不可能」かな。だって科学的じゃないですもんね)

なるほど、わかりました。要は、この本は、

「99.9%は仮説」なんて本の内容も、仮説にしか過ぎないわけだから、疑ってかかれよ!

という、著者の仕組んだブービートラップだったんですよ!

だから、わざと突っ込みどころも多くしてるに違いない。

何事でも、安易に信じ過ぎない」という姿勢自体には共感できますので、その意味では教訓のある本とは言えますね…。

(ちなみに、私は「科学が絶対の価値だ」と思っているわけではないですよ。ただ、科学は物事の道理を理解するために不可欠なツールである、とは思っています。)

(2010.6.5)

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