神流川揚水発電所
連日、計画停電に振り回されています。
(いや、仕方ないことだと思って、甘受してますが)
そんなことから、去年秋に見学した発電所の事を思い出しました。
「神流川(かんながわ)揚水発電所」
場所は群馬県と長野県の県境。
二つのダム(調整池)を使って揚水発電を行う、純揚水式発電所です。
(上部調整池は信濃川水系相木川、下部調整池は利根川水系神流川)
「揚水発電」とは水力発電の一種ですが、単にダムからの流水を使う普通の水力発電所とは違います。
夜間など電力需要の少ない時間帯に、他の発電所の余剰電力をもらって水を上のダムに汲み上げておき、電力需要の多い期間に下のダムに流し、その力を利用して発電する発電システムなのです。
一種の巨大な蓄電池のようなものですね。夜間電力を位置エネルギーに変換して貯めておくわけです。
神流川発電所では、この揚水発電の仕組みなどを見学するツアーを催しています。
詳しくは「神流川発電所見学ツアーステーション TEPCO GEO E SITE」
(う、最近まで普通に見れたのに…ツアー中止のお知らせに変わっている…状況が状況なのでしかたないか)
ツアーステーションから送迎バスが出て、ガイドツアーが催されます。
地下施設を歩いて廻り、巨大な地下空洞や、建設中の発電機など、面白いものを色々見ることができました。
施設内は撮影OKですが、ネット等での公開は禁止となっているので、残念ながら写真は無しですが…
なかなか迫力ある光景と、興味深い解説を聞けます。おススメです。
(前述のように、現在ツアー中止のようですが…なんか、残念です)
ここの発電機のパワーは、一機当たり最大出力47万kw。
福島原発の一号機が46.0万kwとのことなので、それに匹敵するということですね。
当初の計画では全6号機まで作られることになっており、完成すれば揚水発電所としては世界最大の出力282万kwを発電可能だそうです。
…ですが、現在は、一号機のみが稼働。二号機は現在建造中で、24年から稼動開始。
三号以降は、現状計画停止中というのが現状らしいです。
どうも、計画自体がバブルの頃のもので、状況が変わったり電力需要が伸びなかったりで、全機完成の見通しは立っていないという話でした。
揚水発電というのは、なかなかクレバーなシステムだと思います。
しかし上記の通り、揚水発電所はこれ単体では動かせません(充電池ですから)。
他の発電システムとタッグを組む必要があるわけです。
で、特に夜間電力の余りがちな、原子力発電と相性が良いのですけどね…。
今後、発電所のことについて、色々議論が起こるのではないかと思います。
この神流川発電所の行く末も、今後の議論で左右されるかもしれません。
(保留されていた計画が再始動する…とか)
私はもともと、現状において原子力発電はやむを得ないものだと考えていました。
少なくとも、大量の地下資源を使う火力発電よりは、効率やコスト面でアドバンテージがあります。(特に今、産油国もゴタゴタしてますし)
また、発電時に大量のCO2を排出することもありません。
水力発電のような、環境を激変させるほどの大工事を行う必要もないですし、太陽発電や風力発電のように天候に左右されることもありません。
神流川発電所の一機は、福島原発1号機とほぼ同じ出力と書きましたが…
福島原発2~5号機は 78.4万kw、6号機は110万kwと、実際にはパワーでも差はあるんですよね。
(↑資料・「みつめてほしい げんしりょくはつでん」東京電力パンフレットより)
ただ、積極的推進派という事でもありません。
今回のような危険をはらんでいることもありますが、地下資源を使う事では火力と変わりないですし、廃棄物の問題もあります。
原子力はあくまで過渡期のもので、最終的にはさらに安全で、資源枯渇に左右されにくいシステムに移行する必要はあるだろうと思っています。
だから、できれば縮小して欲しいとは思っていたのですが…その次のシステムが、なかなか見えてこないのも現実。
今、一番現実的に思えるのは、都市ガスなどによる家庭用燃料電池の普及でしょうか。
すでに、「エネファーム」なんてのもありますね。
燃料電池では無いですが「エコウィル」なども似たようなものかな。
これらが普及すれば、大型発電所の数を減らせる上、各家庭が発電所になるようなものなので、大規模停電などの危険度は低くなります。
問題はやはりコストでしょうね。
詳しい所はわかりませんが、この設備を導入するとなると、電気料金換算では今より多くのコストを払う必要があることになるんじゃないかと思います。(耐用年数等にもよると思いますけど)
それに、完全に温室効果ガスが出なくなるわけでは無い。(ガスを燃やしてますからね)
例によって、SF的な話なら、他にも希望はあるんですけどね…
「核融合発電」
「宇宙太陽発電(SSPS)」
これらは一応、実際に研究もされている、まったくの絵空事でもない技術です。
これらであれば、CO2の排出も無いし、枯渇資源に頼らず、燃料はある意味無尽蔵!
…まあ、多少危険な部分も予測されていますが…原子力ほどではないと思います。
(火力や水力だって、まったく危険が無いわけではありませんし)
もっとも、これらはまだまだ現実的とは到底言い難い……というのが一番のネックですね(だから、まだSFの範疇という…)。
いずれは実現するものと信じてますが。
なんにせよ、理想を追求しようとすると、現実には節電か電気料が高くなるのを覚悟しなければいけないという事ですか…。
それを踏まえて、今後を考えていかなければならないですね。
(2011.3.25)
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コメント
ええと、完成後の発電容量の値、間違ってません?
それと、核融合発電は現状で全く目星もついていない状況です。
いつになったら実現できるのか、皆目分からないです。今後20年以内には実現できないでしょう。
もし制御された核融合反応が実現したとして、高速の中性子が出るので炉の外壁が放射化します(中性子は電荷を持たないので、壁を作る以外の防御法がありません)。つまり核のゴミは0にはなりません。
投稿: 深井 | 2011年3月28日 (月) 01時08分
カンマが変なところに残っていたので、誤解を生んでしまったかも…(修正しました)。最大出力は47万kw×6台の282万kwだそうです(TEPCOパンフより)
ただ、記事のとおり、全機完成のめどは立ってないらしいです。
そうですね。核融合の目星はついて無いですね。だからまだSFの範疇というわけで…。
でも、岐阜県の核融合科学研究所とか、ちゃんと研究はされてるんですよね。いずれは実現すると期待してますよ(自分の生きてるうちには無理かもですが…)
核融合で中性子は出ますね(「危険な部分」とはこのことのつもりでした)。
でも、危険度や廃棄物の量は原子力発電に比べてだいぶ少ないだろうと思ってます。
それに、ヘリウム3を使えば、中性子も発生しないですし…(どんどんSFな話に…)
投稿: 適研所長 | 2011年3月28日 (月) 22時59分