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東京震災記by田山花袋

最近、読んだ本。



この作品自体は、当時書かれた古いものです。

3月11日を目前にして、この本を読んだのは、私としては偶然ではあったのですが…

実は、私の読んだこの版は、東日本震災直後に出版されたものだったのです(あとがきを見て知った)。決して完全な奇遇ではなかったのでした。

ある意味便乗ともいえますが…こういう書物の存在を、今、世に知らしめたいという意識からのことかもしれません。たしかに、その価値はある本でした。

作者は、そう、「群馬の誇る文豪」、田山花袋なんです。

以前「蒲団」を読んだ時には、散々な言い方をしてしまいましたが(笑)、これを読んだら田山花袋に関するイメージが変わりましたよ、良い意味で。

1923年(大正12年)の関東大震災当時、東京在住だった田山花袋が、当時の実体験や、被災した人々から聞いた話を書きつづったルポです。

田山花袋邸は、それほど大きな被害を受けなかったようですが…
直後にその目で見た光景などが、淡々とした口調で語られます。

「しかし、これも為方がない。皆なそうして亡びて行くんだ。どんなものでも、どんなに栄えたものでも、またどんなに強いものでも、皆なそうして亡びて行くんだ。これが人間と自然との運命だ。自分だッていつかはそうなってしまうんだ。」 (引用)

淡々としている…といっても、単にニュース記事のような無味乾燥なものではなく、
情景描写や、当時の自分の心情や、友人、出会った人の言葉なども織り交ぜられ、それでいて無暗に感情に訴えるような感じでは無い…という意味での淡々とした感じ。私的に、大変好感の持てる書き口です。

これが、あの「蒲団」の作者なのか…!?
私的には、田山花袋は、小説家としてよりもルポライターとして評価したいですね。
(酷い言い様)

しかし、「東京震災記」は、その悲惨な部分だけではなく、そこでたくましく生きようとする人々や、絶望から希望を見出そうとする作者自身の心情も語っていて、単に「悲惨な記録」で終わっていない部分も良いです。

「私はつづいてこのあたりが、大東京の中心になる時代のことを頭に浮べた。この大破壊の結果として、今度こそは本当にこのあたりが立派なものになって行くのであろう。」 (引用)

そして、東京はその言葉通り復活し、しかも、その後、大空襲で再度滅びるも、さらなる大復活を遂げ、今に至るわけです。
まさに不死鳥。

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今回の震災でも、プロアマ問わず、色々な記録が残されているようですが、実際に被災した方々のものは、まだ切実すぎてちょっと読むに堪えられません。

やや客観的な視点(田山花袋にちょっと近い視点)での記録として読めたのが…

僕と日本が震えた日」(鈴木みそ)

Webコミックで、無料で読めます(あ、第一話だけか?昔はもっと読めたような)。
割と軽いタッチではありますが、当時の緊張感も伝わってきます。

あと、先日の「メディア芸術祭」では、しりあがり寿さんの「あの日からマンガ」(地球防衛家のヒトビト)が、大賞に選ばれ展示されてました。
展示された一部を読みましたが、切なくも笑えるような感じで、これも良かったです。

(2012.3.10)

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