富岡製糸場、世界遺産推薦決定
「富岡製糸場の推薦決定 世界文化遺産で政府」
(日本経済新聞 2012/8/23 )
「政府は23日、世界遺産条約関係省庁連絡会議を開き、2014年の世界文化遺産登録を目指している「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)のユネスコへの推薦を正式に決めた。」(引用)
群馬県の富岡製糸場については、以前書きました。
その時にも世界遺産暫定リストには加えられていて、世界遺産への期待があったのですが、今回、政府による推薦が正式に決まったようです。
まだ、世界遺産になったわけではないですけど、実現には一歩近づいたわけです。
身近に世界遺産ができるのは、嬉しいですね。
しかし、実をいうと、富岡製糸が世界遺産、ってちょっとピンと来てなかったんですよね。
富岡製糸場が、アンコールワットやローマ歴史地区と並ぶものになるというのが…。
日光とか、奥州平泉などなら納得感なんですが。
近代建築の製糸工場は、当時世界中にあったはずで、日本特有のものではない。なんでこれが世界遺産に…なんて思ったりもしたんですが…
今回の発表に関連した記事で、日本の生糸生産は、1930年代には世界市場の80%を占め、世界の絹の大衆化に貢献していた、ということを初めて知りました(県民として恥ずかしい…)。
その中心になっていたのが富岡製糸場ということなら、確かに世界遺産としてのバリューもあると再認識しました。
世界遺産への推薦は、富岡製糸場に加え、いくつかの関連施設があります。
ちょうど少し前に、そのひとつを見てきていました。
(まあ、最近、このあたりは世界遺産押しのために整備されて、見に行きやすくなってるということですが)
[ 荒船風穴 ]
富岡製糸場の関連施設で、絹産業遺産群のひとつです。
場所は群馬県下仁田市。
くわしくはこちらで…。
「岩の隙間から吹き出す冷風を利用した蚕種(蚕の卵)の貯蔵施設で、冷蔵技術を活かし、当時年1回だった養蚕を複数回可能にしました。」(上記リンクより引用)
その、蚕種貯蔵施設の遺跡がここにあるのです。
↑木造の建物が無くなってしまった跡、石造りの地下部分だけ残っています。
古代の遺跡のようだ…(実際は近代のものですが)
遺構の奥の方の石の隙間(風穴)からは、今でも冷たい風が吹いてきます。
近くには温度計も設置されていて、外気と風穴の温度が判るようになっています。
↑全体の感じ。たまたま、関係者らしい人たちが視察に来ていました。
「絹遺産」としては、他にも、こんなものもあったようです。
(今回の候補からは漏れたようですが)
[ 薄根の大桑 ]
場所は沼田市。富岡製糸場や荒船風穴からは全然遠い場所ですが…。
国指定天然記念物の、巨大な桑の木です。
桑と言えば、カイコの餌。その意味での絹遺産ということかな。
説明によるとこの木は、樹齢1500年と推定され、ヤマグワとしては日本一の巨樹であり、桑樹では日本三名木のひとつと言われているものなのだそう。
この木を見に行くと、近くの家に住む「この木を守る」おばあさんが、パンフレットをくれたり親切に説明してくれたりします。
さて、富岡製糸場と関連施設は、無事世界遺産に登録されるんでしょうか。
結果が楽しみです。
(2012.8.24)
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 野木町煉瓦窯(2019.12.10)
- 埼玉県立歴史と民俗の資料館(2019.11.26)
- 台風19号の記録(2019.11.04)
- 八ッ場ダム 満水(2019.10.27)
- いきもの狂騒曲(2019.10.18)
「群馬」カテゴリの記事
- 温泉宿のレトロゲーム(2019.09.28)
- 中之条ビエンナーレ2019・2(2019.09.21)
- 中之条ビエンナーレ2019(2019.09.11)
- 久々の「ななこし」(2019.08.26)
- 集まれ群馬のハニワたち(2019.08.20)
コメント
「世界史上」ではなくて「世界市場」ですよね?
私のIMEも候補の先頭は前者でしたがW
閑話休題。
明治時代から戦前にかけての日本は、せっせと絹織物を輸出して外国から戦艦などを買っていたので、そりゃあ世界シェアがダントツ一位でもなんの不思議もありません。
たとえば、日露戦争の帰趨を決した日本海海戦で連合艦隊旗艦として有名な三笠は敷島級の四番艦、つまりは戦艦四隻をイギリスから買っていたことになります。
その後も金剛までは外国から購入、その後は自国での建造になりますが、主な原材料である鉄鉱石はずっと輸入ですから、一体どれだけの量の絹織物が輸出されたのか。
ところで日本の輸出産業としての生糸の生産の衰退は、アメリカでレーヨンなどの合成繊維が発明されたこともありますが、ABCD包囲網と戦時法による産業統制に因るものが大きかったようです。群馬県の繭生産は1/4になってしまったとか。
投稿: 深井 | 2012年8月26日 (日) 17時58分
>世界史上
おおっと、そのとおりです。ご指摘ありがとうございます。修正しました。
太字での誤字は恥ずかしい。
なるほどー。
日本の絹生産の衰退にはそんな歴史が。
それでも、私の子どもの頃には、群馬ではまだあちこちで養蚕やってたんですけどね。祖父母の家でもやってました。周りには桑畑もいっぱいありました。
今はその桑畑すらめったに目にしなくなりましたからね。
投稿: 適研所長 | 2012年8月28日 (火) 23時27分