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「昔はよかった」病

最近買って読んだ本。

パオロ・マッツァリーノさん(自称イタリア人・笑)好きで、すでに著作もいくつか持ってます。
最初の「反社会学講座」が初期にして究極…というのは、よく言われる所ですが(要出典)、本作はそれに次ぐヒットではないかと、個人的には思いました。

まあ、もともと自分も「昔は良かった」言説が嫌いなもので、バイアス評価な面もあるかもしれませんけどね。

ただ、やはり調べあげたデータを元にした主張には、説得力がありますよ。(単に「俺がそう思うから」みたいなのではなく)

第2章の治安に関する件などは、「反社会学講座」にも通じるところがあり痛快。「振り込め詐欺の被害額は年々増えている」というのはよく報道で聞きますが、件数自体は2004年から2012年の間に、1/4になっている…というのは、これで初めて知りました。だからって良いわけじゃないですが、でも、殆どの人は(自分も含め)件数も増えていると思い込んでたでしょう?そういう、「思い込み常識」を統計データでぶった切ってくれるのが、パオロ著作の好きな所です。

他にも、「美人」に関する話とか(昔の募集広告、笑ってしまうほど酷いですよ)、「安心・安全」の話もなかなか深かった。
(「ハイテンション」の誤用は、まあ、許してよって感じですけどね…。私なんかも、本来の意味はわかっていても、使ってますよ。)

私もよく地方の歴史民俗資料館なんかを巡って、「昔は酷かった」資料を見つけたりしてます。特に江戸時代とかですね。しばしば「江戸時代よかった論」をネットで見かけたりするんですが、決してそんなこたあない。(参照 江戸時代の農民の記事)

まあ、単純に「平均寿命」が年々高くなっていることでも、昔より今が良いことはわかるんですけどね(平均寿命は、単に長生きというだけでなく、殺人や、病死や、自殺なんかも含むわけですから)。

ただ意外なことに、ネット民も思ったより「昔が良かった」病ではなかったようです。まさに今日、知りました。

池上彰「昔の日本は街中ゴミだらけで、国民は不潔で臭くてマナーも悪かった。民度が高かったとか大嘘」 」(2015/8/18 哲学ニュース)

この話題で、たくさんの人が書き込みをしているのですが、その多くが「昔は決して良くない」という意見のようで、逆にちょっと拍子抜けでした。ネットといえば保守が多く、昔が良かった派が多いように思い込んでましたが。まあ、良いことですけどね。(それとも「池上サン」パワーなのか?)

あ、私も何でもかんでも昔より今のほうが良いと思っているわけではないですよ。ただ大概のことは良くなってる、と思ってるだけです。

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ところで…
私は、パオロさんのファンを自認してますが、盲目的信者でも全肯定しているわけでもないということをお断りしておきます。

パオロさん、ブログも書いてますが、そっちの方では多少気が緩んでいるのか、私的には首を傾げる論説がたまに見受けられます。

例えば「美味しんぼの鼻血問題」について言及した記事(2014/05/19)では、「そもそもみなさん、『美味しんぼ』の影響力を過大評価してますよ。」(引用)なんて書いてますが、むしろそれは過小評価しすぎです。美味しんぼの影響力は、数字でも明らかではないですか?(累計1億部だそう)。そして「福島には住めないかもしれないぞ」(引用)というウソ(福島旅行の記事参照)に実際苦しんだ人がいるわけで、「そういう意見もあるよね」(引用)と軽く言うような気分には、ちょっとなれませんね、私は。

それから「実名報道」について言及した記事(2015/04/28)で、本題の件はともかく、この中で「防犯カメラの設置や販売をする業者や警備会社は偽善者ではないかと私は疑ってます。」「常時監視されていないカメラに犯罪抑止効果はほとんどなく、気休めにすぎないという」(引用)…と、防犯カメラが防犯に全く役に立たないものであるかのように言い切ってます。
が、果たしてそうでしょうか? ご本人も中で「もちろん、記録された映像は犯人を特定する有力な証拠にはなります。ですからカメラは犯人逮捕には役立ちます。」と書いてます。
実際、最近も防犯カメラの情報が元で事件が早期解決したという話をよく聞きます。「高崎駅の硫酸事件」なんかは、地元ですし記憶に新しい。

で、防犯カメラによる事件解決が多く報道されれば、それは抑止力(防犯)に繋がるものだと容易に想像できますが…。実際、犯罪件数は年々減っているとパオロさん自身も書いていることですし、そこには近年増える防犯カメラの効果もあると考えるのが自然ではないでしょうか?

あと、ごく最近の記事「リベラルな靖国参拝論」(2015/08/17) 。
「毎年この時期、日本の首相や閣僚が靖国参拝するかどうかでもめてるのが、不思議でなりません。」(引用)なんて、トボけたことを言ってます。

主旨としては「参拝するもしないも個人の自由ってことです。」(引用)ということのようですが……。
そりゃ、私人である「隣のオシサン」みたいな人なら、いつどこに参ろうと自由ですけど。
首相は公人であり、日本の代表と見做される人ですからね。当然ながらその行動は、常に国民や海外から注目されています。
参拝しないなら保守派の支持者から、参拝するなら海外(特に中韓)から非難される…という話でしょう。(海外なんて放っておけばいい、ってわけにもいきませんね。海外と取引してる人の損得に影響をあたえますから。これは「気持ちの問題」ではなく「数字の問題」ですよね。)
「なんでもめてるのか不思議」って、社会学を齧ってそうなパオロさんから言われると、むしろ「釣り」なのかな、とすら思っちゃいます。

…なんて、ちょっとディスっちゃいましたが、大筋ではパオロさん好きに変わりないです。
次の新作にも期待してます。(というか「誰も調べなかった日本文化史」も、まだ読んでないんだった。買おうかな)

(2015.8.18)

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